
メルさんは途上で買ったコーヒーを片手にインタビューに現れました。忙しくて家で飲むひまがなかったそうです。メルさんは音楽家(シンガー、ソングライター)として活躍しているだけでなく、英語発音教室の経営者で、作家でもあり、妻でひとり娘の母親でもあるという大活躍ぶりです。
小学校6年生の時には日本人のペンパルと文通もしていましたが、日本に本当にハマったのは学校を終えてカナダ政府に就職していたとき、日本のアニメに出会ったときでした。ラルクアンシエルの音楽が気に入って、アニメを見ながら日本語も覚えたそうです。夫の耕平さんとはバンクーバーで出会って、日英両語の交換教授もしましたが、耕平さんに惹かれた理由の一つは大好きなアニメの主人公がコーヘイだったからだそうです。

メルさんは制限年齢ぎりぎりでワーキングホリデービザで日本にやって来ました。ロックシンガーになりたかったのですが簡単ではなく、コーヒーショップで英語を教えたりしていました。ロックからジャズに変更して、カナダの歌も歌い、今では人気のプロシンガーです。「OTAふれあいフェスタ」でも歌いました。自分で歌う他に英語で歌いたい人のための英語発音教室も経営し、子どものころから書くことが好きでしたが、最近自分のSF小説「再生」が本になりました。

夫の耕平さんは日本人ですが、国際結婚は最初は気づかない文化の違いなど想像以上に困難なこともあり、真剣に取り組まなければならないものだそうです。
絵の上手な娘さんが日本の小学校に通っていたことから、日本の学校は尊敬や秩序などの社会的責任を体験させて教える素晴らしいところだというご意見です。学校給食も素晴らしいけれど、学習に問題を抱えている子どもたちには十分対応できていないところもあると感じています。メルさんは娘さんと大人のように接し何でもオープンに話すそうです。娘さんには日本人やカナダ人だけでなく世界人として成長してほしいと願っています。

大田区在住のメルさんはご近所さんが大好きで積極的にお付き合いしています。お隣さんどうしがよく知り合うのにはコミュニティが大事です。「まちゼミ」はコミュニティを大事に思う地域の人たちが組織するイベントで地域の人たちが積極的に知り合うのにとても役立っています。

メルさんは、海外から日本にやって来て住もうとするなら、まず日本語を学んで積極的に話すことが大事だと言います。自分たちだけの狭いコミュニティを作るのではなく、心を開いてどんどん出かけて行くことが大事だからです。「わたしは直接人種差別や偏見を感じたことはありません。日本が好きで日本に受け入れられました。」というのがメルさんのことばです。大田区はメルさんが15年前に来たときと比べて外国人の受け入れがとても良くなったということです。

メルさんのようなお隣さんがいて良かったと思うと同時に、わたしたちもまた新しく日本にやって来て近くに住むことになった人たちをオープンな気持ちで暖かく迎えて、良い隣人になりたいと思います。

「隣の外国人」実行委員 川井仁史