Vol.19 ナンドキショル ウルクデ さん(インド)

「よろしくお願いします」と、流暢な日本語で丁寧にご挨拶してくださったナンドキショルさん。通称ナンドさんは、インドから東京工業大学大学院に留学し、現在は修士課程2年生です。

研究に忙しい毎日の中でも、積極的に国際都市おおた協会(GOCA)のイベントに参加したり、友人と日本国内を旅行したりと日本での生活を楽しんでいます。

 

 

 

― 日本語との出会い

ナンドさんは、広大なインドのほぼ中心に位置するナグプールという街の出身です。農業に従事しているご両親と大学院生の弟さんがいます。

ナンドさんは、高校時代に化学に興味を持ち、地元の大学では化学工学を専攻しました。

ナンドさんが日本と日本語に出会ったきっかけは、大学3年生で韓国語を習い始めた際に、先生から「先に日本語や中国語を学ぶと効率的だよ」と勧められたことでした。

韓国語の学習のために始めた日本語でしたが、次第に日本の景色、また平安時代や戦国時代などの歴史や文化にも惹かれて、「いつか日本に行きたい」と思うようになりました。

▲インドのご家族と

 

 

― そして、日本留学へ

大学卒業後は石油プラント会社に就職しましたが、さらに勉強したいと大学時代の先生に相談し、日本へ留学することを決意しました。仕事を辞め留学の準備を開始。努力の甲斐あり、超難関の文部科学省の国費留学生に採用され、日本留学が決まりました。

その後、自身の専攻分野の研究ができる大学の中から東京工業大学大学院に合格。来日後半年間は研修生として語学研修を受け、2022年9月から修士課程がスタート。今年9月に2年生になり、いよいよ本格的に研究を始めたところです。

 

― 大学院での研究や日本の暮らしはいかがですか?

「大学院では、応用化学を専攻しています。サトウキビを原料としてバイオエタノールから水素を作るための触媒が研究対象で、これは地球温暖化対策のために、ガソリンに代わる環境にやさしいエネルギーを開発することに役立つ研究です。」

「平日は毎日9時半から夕方6時ぐらい、時には夜遅くまで研究室で過ごしています。」

「大学の寮に住んでいて、夕食は自炊をしています。エビチリ、パスタ、チキンステーキ、インド風の野菜の天ぷらなどを作っています。インド料理が恋しくなるとインド料理店に行きますが、インドの母の料理と比べて甘いと感じますね。」

▲世界各国からの留学生仲間とスカイツリーを訪れました♪

「大学の研究室や寮には、スペインやタイなど外国からの留学生がたくさんいて、友達になりました。一緒に旅行したり仲良くしています。卒業して母国へ帰った友人とも付き合いが続いていますよ。」

休日には、友人たちと旅行や近郊の散策を楽しんだり、GOCAイベントに参加したり、子どもたちと英語で触れ合うボランティアもしています。

日本のよいところとして、「日本人はやさしいです。規則をしっかり守るところもよいと思います」と話してくれました。

積極的に日本での生活を楽しんでいるナンドさんは、来日してから2年たたないと思えないほど、日本語も流暢で、生活にもすっかり溶け込んでいるようです。

 

― 日本の文化や自然が大好きです

「日本は思っていた以上に美しい。四季があるのもいいですね。」ナンドさんは忙しい大学生活の合間にも、日本と日本文化を探求しています。

「去年の冬は日光に行って初めて雪を見ました。絶対に忘れられない思い出になりました。」東照宮の歴史や豪華な装飾も興味深かったそうです。

 

 

 

 

 

 

鎌倉の大仏も、週末を利用して隔月通うほど気に入っています。「鎌倉は最初の将軍がいたところ」と歴史に詳しいナンドさんは、「もっといろいろ歴史的な街を見にいきたい」と考えています。その他にも、雪の北海道、九州の青い海、四国、長野や東北地方など、行きたいところはたくさん。

昨年は大学の留学生仲間と富士山に登りました。また、代々木公園でよさこいを見て高知にも行ってみたいと思い、高知弁にも挑戦してみたそうです。

 

― 漢字はかっこいい!

日本語は、来日後も「研究室で先生や友達とたくさん話したい」と頑張って勉強を続け、日本語能力試験(JLPT)のN3を取得。さらに読書にも挑戦中です。

漢字はすでに1500文字を覚え、「漢字はかっこいい!それに、字の部分に人とか木とか意味があり、字を組み合わせて別の字になるところは数学的でおもしろい」と理系らしい感覚で楽しんでいます。「太宰治の『人間失格』や夏目漱石の『こころ』など、今は英語で読んでいる好きな本を日本語で読んでみたい。そのためにもっと日本語ができるようになりたいです。」

ナンドさんの日本文化への興味は尽きることがありません。              ▲富士山登山は一生忘れない思い出です♪

 

― GOCAのイベントに参加して

忙しい生活の合間には、積極的にGOCAの事業にも参加しています。

昨年度の「日本語でスピーチ」では、富士山登山の体験を力強くスピーチし、観客から大きな拍手をもらいました。インドのご家族もオンラインでナンドさんのスピーチの様子を視聴したそうです。

 

また、昨年秋の「ホームビジット」では日本人のお宅を訪問。「ご夫婦や他の参加者の方と一緒にお団子を作りました。たくさん話もして、とても楽しかったです。」

「そのご夫婦とは、友達になって、今も交流が続いています。一緒に羽田空港を着物でお散歩するイベントにも参加したんですよ」と、嬉しそうに話してくれました。

 

熊本の「いきなり団子」を作りました♪

 

― 将来の計画や希望をお聞かせください

「来年、修士課程を修了した後は博士課程に進むことを決めていますが、どこの国の大学院に入学するかはまだ迷っています。ヨーロッパ、中でもスウェーデンとか北の方の国にも行ってみたいです。」

ナンドさんにとって日本は初めての外国でした。これからは研究活動を通じて、他の国々にも行く機会が増えそうです。博士課程では日本を離れる予定ですが、それでも「日本は好きなので、必ず戻ってきます」と約束してくれました。研究の国際交流などで日本へ来る機会があることも期待しています。

博士課程を修めた後は、学者への道を選ぶか、企業などで学んだ技術を活かすか、まだ決めていませんが、「世界中を旅してみたい。世界各地で働いてみたい」と大きな希望を持っています。国際的な広い視野を身に付けたナンドさんが、世界で活躍する将来が楽しみです。

羽田空港を和服で散歩するナンドさん

 

☆終わりに

日本語の堪能なナンドさんへのインタビューはすべて日本語で行いました。

好奇心旺盛で努力家のナンドさんは、今後他の国に行かれても、その国の言葉を身に付け、文化を知り、生活を楽しまれることでしょう。それでも、ナンドさんにとって日本が第二の母国としていつも帰ってきたい場所となるように、日本で楽しい思い出をたくさん作ってほしいと思います。धन्यवाद (ダンニャワード)

「隣の外国人」実行委員 今宮節子

 

 

                    

 

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