Vol.26 カリド・アッジイコトさん(モロッコ)

2021年6月、立教大大学院への留学のため奨学金を受けて来日。翌22年に卒業し、日本のeコマース(電子商取引)企業で戦略プロジェクトチームのエンジニアとして働いたそうです。現在26歳、将来は自分の会社を持ち、日本で学んだキャッシュレス決済やインターネット銀行など新しいサービスをモロッコに広げたいと夢を語ってくれました。

 

▲インタビューの様子

― 来日のいきさつは。

モロッコでエンジニアの修士号を取り、2つ目のビジネスのマスターを取るためです。フランス語や英語が話せるのでカナダの方が身近だったのですが、(今までとは)違った経験がしてみたくてハードルが高い日本を選びました。モロッコと日本のビジネス関係を強める懸け橋になれるのではないかと考えました。
日本のアニメはアラビア語にも翻訳され、モロッコでもとても人気があります。「ドラゴンボール」や「コナン」が有名です。それで日本に親しみを感じていたことも来日のきっかけのひとつです。日本語は大学時代に少し勉強しただけで、立教大では英語で学びました。今も週に2回、日本語学校の社会人向けコースで学んでいます。

 

― モロッコと言えば、第2次世界大戦中の映画「カサブランカ」を思い出します。映画に描かれたモロッコにはヨーロッパやアメリカなど多くの国々から人が集まり、とても繁栄し、混沌もあったようです。

非常に古い映画ですが、北部ヨーロッパやアメリカの多くの人々もこの映画でモロッコを知っています。モロッコは歴史的に非常に古い王国で、世界最古の大学もあり、アフリカでは文化的な国です。
ヨーロッパに近く(ジブラルタル海峡対岸の)スペインと関係が深いです。昔はモロッコがスペインを植民地化し、その後、スペインがモロッコを植民地化しました。モロッコの王制は12世紀から現在まで続いています。日本も長い天皇制の歴史があり、歴史的な文化財が豊富で、外国から多くの人々が訪れます。モロッコと日本はその点がよく似ています。

 

― 日本の印象はいかがですか。

▲沖縄旅行の写真

日本に到着した時はちょうど新型コロナウイルス感染症流行の真っ最中で、空港の感染予防のための管理がたいへん厳しかったのでびっくりしました。イスラム教徒で、最初は戸惑いましたが、空港や大学にもお祈りができる場所があり、安心しました。
東京はとても便利な都市で多くのチャンスがあります。交通の便もよく、安全で、コンビニもたくさんあります。(笑)

北海道から京都、沖縄まであちこちを旅行し、日本は多様な国だと思いました。各地にいろいろな方言があるのは驚きでした。一番良かった場所は沖縄です。7月に東京の猛暑から逃れて、リラックスできました。京都府福知山市も好きです。旅行中、電車の中に財布を置き忘れ、それが福知山駅に届けられていたので訪ねることになりました。深い森に囲まれ、自然が美しく、お城のある、落ち着いた小さな町で、私の生まれ故郷、南部モロッコのタルーダントに似ていると感じました。

 

― 日本以外に行ってみたい国は。

タイやインドネシア、フィリピンです。今は休みがあまりないので、4週間くらい休暇が取れれば行ってみたい。仕事で住むとすれば、フランスの会社で働いているので、ヨーロッパの国を身近に感じます。

 

― 日本人の友達はできましたか。

▲カリドさんと友人

大学院時代の友人のほか、趣味のハイキングを通じて日本の友達ができました。私は内向的で日本語という言葉の壁もあり、向こうから話し掛けてくれることが多いです。インスタグラムを使ってハイキングの行き先などの情報を交換しています。
まだ彼女はいません。今は仕事に集中しており、やることがいっぱいあるので結婚は考えていません。

 

― 日本食には慣れましたか。

刺し身、すし、天ぷらが好きです。うどんや蕎麦はあまり好きではありません。納豆は絶対ダメ。一度、試してみようと思って買いましたが、においがきつくて、とても食べられなかった。(笑)

 

― 大田区の住み心地はいかがですか。

通勤のため練馬区から大田区へ引っ越しました。去年は2度モロッコに帰りました。羽田空港が近くたいへん便利です。自宅近くの多摩川台公園には緑が多く、仕事の帰りによく散歩に行きます。いろんな花が咲いていて、夜は木々の間から摩天楼(高層ビル)の灯りが見えて素晴らしい眺めです。

 

▲技術系イベントでの一枚

― これからやりたいことは。

自分の会社を経営したいです。日本でキャッシュレス決済やネットバンキングなどの戦略プロジェクトを経験しました。このようにフィンテック(金融技術)を生かした新しいビジネスはモロッコでも始まっており、そういう仕事を通じて母国を支援できると思います。ただ、日本の企業文化にはなじめませんでした。堅苦しくて細かいルールが多いと思いました。いずれは家族が待つモロッコへ帰るつもりです。

 

 

― インタビューを終えて

▲インタビュー終わりにカリドさんと

モロッコの方とお会いするのは初めてでした。モロッコの現況や歴史を本で調べたり、映画「カサブランカ」を改めて観たりしてインタビューに備えました。カリドさんは温厚で聡明な方だと感じました。色々と率直に質問しましたが、はぐらかすこともなく、実直に言葉を尽くして答えてくれました。母国モロッコと日本を結ぶビジネスが成功するように祈っています。カリドさんのお話を聞いてモロッコへ旅行に行きたいという思いが急に膨らんできました。

(隣の外国人実行委員 森 保裕)

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