ラスマナ・バタライさん(51歳)は、仏教の始祖ブッダ生誕の地として名高いネパールのルンビニ出身、インドで本格的インド料理を学び、中東カタールやインドで修業を重ね、2000年に石川県金沢市で働くいとこを頼って日本での第一歩を踏み出しました。
その後、さらなる新天地を求め友人のつてで東京へ。その後、妻のプスパさんを呼び寄せ、茗荷谷、国分寺、飯田橋等のインド料理店で懸命に働き、資金を貯めながら日本社会の仕組みを勉強しました。
その甲斐あって東急池上線池上駅近くにインド・ネパール料理店ロサニ(ネパール語で光)を開業したのが2009年10月、店は今では大田区のいちおしグルメ優良店に選ばれ、客席間のパーテーション等新型コロナ対策も万全、多くのリピーターで賑わっていますが、ラスマナさんは当時の心境をこう語っています。
「開店当時ネパール人は少なく、うまく行くかとても不安でした。日本の習慣や社会のルール、例えばゴミ出しのルールを覚えるのも大変でした。故郷に残してきた二人の娘と日本で一緒に住みたいが大丈夫か、日本の学校は外国人をきちんと受け入れてくれるのか、不安は限りなく湧いてきました。」
その後、ラスマナさん夫妻は娘二人、姉のマニシャさん当時中学2年生、妹のサクラさん当時小学校4年生を池上に呼び寄せました。今ではマニシャさん高校2年生、サクラさん中学1年生、二人とも元気ハツラツ、学校生活を次のように話します。「日本語を覚えるのは大変でした。とくに漢字は読み方がいくつもあり今でも苦労します。学校の友達に助けてもらい、その代わりにネパールで学んだ英語を教えたりしています。皆仲が良くイジメの経験はまったくありません。日本語は学校だけでなく大田区のボランティア日本語教室に通い日本人の先生から多くのことを教わっています。もっともっと勉強して将来は日本の社会の第一線で活躍したいです。」
ラスマナさんは地元の活動に積極的に参加しています。本門寺の月一回の朝市、花祭りやお会式の際の出店、商店街のイベントの常連で強い地元愛を抱いています。
「これまで故郷の親戚・友人、日本の友人・近所の方々、さらに妻や娘達、多くの人に助けてもらいここまで来ました。恵まれた人の縁に感謝しています。池上は本門寺を中心にした信仰心あつい門前町、生まれ故郷のルンビニとの深い因縁を強く感じます。とにかく日本大好きで、開店10周年にあたる昨年8月には友達と念願の富士山登頂を果たしました。」
妻のプスパさんは、「店で多くのお客様といろいろな話ができるのがとても嬉しい、娘達も元気で頑張っており幸せです。」と言います。
ラスマナさんには夢があります。
「学校が近くにあり、娘達が充実した教育を受けられたのはすばらしいことです。これから家族と一緒に日本に住みたいと願うネパール人はもっと増えるでしょう。ネパールから来る小さな子供達に日本語だけでなく、ネパール語、ヒンディー語、英語も併せて教える学校を区内に作ってほしいです。私達は定住覚悟で日本に来ています。稼いだお金を母国に送金しようとしているわけではありません。このような学校が出来て、子供達が頑張れば、大人達も元気になれます。長く日本に住んでいるのですから、これから来る人たちのために道を開いてあげたいです。ロサニでもっともっと美味しい料理を工夫してより多くのお客さんに喜んでもらい、しっかり稼いで、日本の意欲ある若者たちの役にも立ちたいと願っています。「人に感謝、努力すれば必ず報われる」が私の信条です。」
文責:「隣の外国人」実行委員 橋本