Vol.24 ムー アキミさん(中国)

 

アキミさんは2023年6月にご家族で来日。現在は主婦として2人のお子さんを育てるかたわら、日本語力アップに励む毎日です。
来日半年後に受けた日本語能力試験(注)でいきなりN3(中級レベル)に合格、そして今年の7月にはN2に合格!
そんなアキミさんに、日本での生活や日本の印象、将来の夢などをお聞きしました。

(注)日本語能力試験は、日本語を母語としない人の日本語能力をレベル別に認定する試験で、N1(上級レベル)からN5(初級レベル)までの
   5段階の
試験があります。

 

― 日本へ

アキミさんは、中国東北部ハルビンの出身です。北京の大学に進学してジャーナリズムを専攻しました。
大学卒業後はイギリスの大学院に進学し、ジャーナリズムを修めました。大学院修了後は北京に戻り、広報の仕事をしていました。
そして昨年、ご主人の仕事の都合により一家で日本に移りました。

 

― 日本人って不思議

▲インタビューの様子

北京時代には、日本企業にもお勤めされていたアキミさん。日本人の同僚がどう映ったか伺ったところ、とにかくびっくりの連続だったそうです。

「日本人の同僚は、みんなスーツ。夏でもスーツ(笑)。中国人社員は営業職でなければTシャツで仕事をしていました。」
ランチの様子も違います。「中国人社員はほとんど外食でしたが、日本人はみんな弁当を持ってきていました。しかもとても小さい。私の日本人上司も小さい弁当だったので、おなかがすかないのかなと思っていました。その上司は毎日コンビニでスナックを買って食べていました(笑)。」

また、中国では転職することが珍しくないそうで、その日本人上司が40年近くも同じ会社に勤めていることに驚いたとも。「40年とは不思議です。(私には)不可能です。」
ちなみに、社内では英語で会話していたため、日本語は必要なかったそうです。

 

― 日本語の勉強

短期間で日本語が上達したアキミさん。どんな勉強をされたのでしょうか。とても気になります。
日本語の勉強のきっかけは、ご主人の日本転勤でした。ご主人の仕事の都合で来日することになったため、来日の3か月ほど前から独学で勉強を始めたそうです。来日前は日本語教科書として中国でよく使われているテキスト『標準日本語』を使って勉強し、来日後はGOCAの初級日本語講座も受講しました。

「言葉はコミュニケーションの道具で、人と人のつながりのために必要なものです。」とアキミさん。
日本語上達の秘訣は、アキミさんの優れた能力や並々ならぬ努力、さらには、言葉に対する強い思いだったということですね。

 

― 趣味も日本とかかわりが

アキミさんの趣味は、読書(特に日本の推理小説)、映画鑑賞、旅行です。
「読書では、夏目漱石、芥川龍之介、三島由紀夫から日本の小説を読み始め、その後推理小説が好きになりました。」
日本の推理小説は中国でも人気があり、大きな書店には日本の推理小説のコーナーがあるそうです。

「東野圭吾は特に人気があり、『容疑者Xの献身』は中国でも映画化(リメイク)され、私も見ました。東野圭吾のほかにも、島田荘司、綾辻行人、宮部みゆき、湊かなえなどが好きで、特に好きなのが、松本清張です。ドラマにもなった『黒革の手帖』は大好きです。」
アキミさん世代の方が松本清張をお好きとは意外でした。また、中国で日本の推理小説がこんなに読まれていることにも驚きました。

▲下田での一枚

「映画では、是枝裕和監督の映画が好きで、『奇跡』は大好きです。日本に来てからは、川崎や早稲田で映画を見ます。最近見た映画は『バービー』です。」映画館だけでなく、ネットでも映画を楽しんでいるそうです。

そして、旅行も楽しんでいます。
「いろいろなところに行きました。夫は日本が大好きで、休みのたびに日本に旅行していたので、来日前にも夫と一緒に京都、神戸、熊本、福岡、北海道、鎌倉などに行きました。来日してからは、家族で大阪のUSJに行ったり、伊豆に河津桜を見に行ったりしました。」
「ヨーロッパは、イギリス留学中に各地を旅行しました。アジアは、中国国内はもちろん、トルコ、ベトナム、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシアなどに行きました。アメリカやオーストラリアにも行きました。」
アジアとヨーロッパに関しては、アキミさんの未踏の地を探すのは大変そうです。

 

― 日本の好きなところは

日本が大好きなアキミさん。日本のどんなところがお好きなのでしょうか。
まず、他人への配慮があり、人と人との距離が程よいところだそうです。
たとえば、中国では駐車の仕方が乱雑なので、後から止めた車のせいで自分の車が出せなくなってしまい、言い争いになることが良くあったそうです。アキミさんによると、中国人は「自分」を主張して行動するのに対して日本人は他人を気遣って行動するので他者と言い争うことが少ない、とのこと。他人への配慮は、人と人との距離にもつながり、アキミさんにとっては近すぎもせず遠すぎもせずの、ちょうど良い距離感なのだそうです。

また、日本では細かなルールがあり、みんながルールを守っている点も好きだそうです。来日当初はリサイクルに出すビンを洗うというルールに驚いたそうですが、面倒だけれども、このスタイルが合っていると感じています。

 

― 将来は

▲インタビュー終わりにアキミさんと

アキミさんの将来の夢は、中国にいた頃のように広報の仕事をすることだそうです。
「日本に来る前は広報の仕事で言葉にかかわっていたし、趣味の読書や映画でも文字に触れていたのに、今は全然言葉が通じないのでもどかしいです。」
「家族との時間も大切ですが、仕事をすると、主婦でいるよりもできることや人とのつながりが増えるので、仕事をしたいです。」
仕事をしたいというアキミさんの強い気持ちが伝わりました。

家族との生活を大事にしつつ、仕事を通じて人とのつながりを広げていきたいと希望するアキミさん。希望の仕事を得て、生き生きと仕事をしているアキミさんの姿を見てみたいです。

(隣の外国人実行委員 関陽子)

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